
ここから先は乃村工藝社の連携先ページにリンクします。リンク先で募集職種一覧から応募いただけます。(CICは常時募集をしていない場合もございます。ご了承ください。)
CIC NOTE
はじめまして、CICの東原です。主に博物館のグラフィックや映像、造形などの展示制作を担当しています。
展示に欠かせない「解説グラフィック」。でも、「なんだか目立たないな……」と感じたことはありませんか?「せっかく丁寧につくったのに、誰も立ち止まってくれない」——そんな苦い経験を、展示に携わる方なら一度はお持ちかもしれません。
一方で、来館者の目線に立ってみると、「文字はあまり読まないんです」「つい流しちゃって…」という声もよく聞きます。文字が多くてとっつきにくかったり、どこから読めばいいか迷ってしまったり、なんとなく難しそうに見えてしまったり。実を言うと、私自身もプライベートで博物館を訪れるとき、内容を無意識に推測して解説を読み飛ばしてしまうことが多々あります。つくる側の思いと、見る側の反応には、時として意図しないギャップが生まれることがあります。
グラフィックは情報を視覚的に整理し、直感的に伝えるうえで非常に重要です。ですが、“伝えたい情報がそこにある”ことと、“実際に読んでもらえる”ことは別の話。動きのある映像とは異なり、静止しているグラフィックは、時に空間の「背景」と化してしまうのです。
だからこそ必要なのが、“つかみ”です。
これは、観客の注意を引く導入の一言として、漫才でよく使われる言葉ですが、展示にも応用できます。来館者の興味を惹き、足を止めてもらう——そのための小さな工夫が、展示全体の印象を左右します。
たとえば、静的な地図グラフィックの上に、簡単なアニメーションを重ねてみる。移動や変化を表す動きがあるだけで、情報に生命感が宿り、ストーリーが生まれます。視線は動きに自然と引き寄せられ、「ここに注目して」というメッセージが無言のうちに伝わるのです。
さらに、アニメーションのスピードやリズム、音の有無といった要素も、来館者の理解や印象に影響を与えます。こうした演出の積み重ねが、展示を「ただ見るもの」から「参加し、感じるもの」へと変えていきます。
もちろん、展示に大がかりな仕掛けを入れることは難しい場面も多いでしょう。だからこそ、限られた条件のなかで、来館者の心を動かす“つかみ”の工夫が重要になります。ここでは、展示解説に応用できる「つかみ」の手法をいくつか整理してみました。
どれも比較的シンプルな仕掛けですが、展示の目的や文脈に応じて選び、組み合わせることで、立ち止まってもらう導入として効果を発揮します。
こうした“つかみ”は、単に目を引くだけでなく、来館者の関心を展示の本質へとつなげる「導入」として機能します。何を見せたいのか、来館者がどこで展示に出会い、どう感じてほしいのか——その文脈を読み取った上で、ふさわしい“つかみ”を設計することが、コンテンツ制作における重要な視点です。
展示を『伝わる場』にするためには、見る人の心に届く丁寧な工夫を積み重ねることが大切です。大がかりな仕掛けが使えない場面でも、小さな“つかみ”を工夫することで、展示の魅力を引き出すことができます。そんな提案を日々心掛けながら、博物館に来る人たち、そして作る人たちが共に楽しめる展示作りをお手伝いしたいと思っています。