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CIC NOTE
私の中の新たなトレンド:控えめでありながら精緻さが増しているデジタル空間演出
これまで、デジタル演出では規模やビジュアルのインパクトが求められてきました。しかし、最近ではスクリーンの大きさを追求するだけでなく、機材の設置そのものにこだわり、控えめでありながらハード・ソフト両面で繊細な設計が重視される傾向が見られます。 私が携わっている仕事の中でも、「空間に置くグリーン植栽の魅力を引き出すデジタル体験」や「歴史的な空間で無機質な機材の存在感を抑えた演出」などの要望をいただくことが増えてきました。
これに伴い、かつてのように高機能な機材や派手なデジタルコンテンツを全面に押し出すのではなく、より空間に溶け込むような演出が求められています。そこで、私はデジタル空間演出を日常的な体験として捉え、演出そのものには「合理性」が重視されていると感じています。
デジタル空間演出の合理性を、体験デザインの際につねに意識している、以下の2つの視点から考えます。
空間デザインの現場では、「空間や機材の使い方がうまい」というコメントがよく聞かれます。これは誰もが納得できる「合理性」の表れといえるでしょう。
Site-specificとは、展示される作品がその場と密接に関係し、場所や空間の特性に応じた唯一無二の体験を生み出す手法です。
「吹き付ける海風に煽られる」「海に向かって叫ぶ」ーー海辺ならではのシチュエーションを体験できるインストレーション
慶應義塾大学メディアデザイン研究科Unexpected Cityプロジェクト: あるいはあの時起こり得たかもしれないもう一つの世界の可能性につながるボタン,
「フューチャースケープ・プロジェクト」, 象の鼻テラス, (2019.6)
この手法を取り入れることで、空間とデジタル演出が相互に影響し合い、自然な調和が生まれるのです。空間の特性に沿った形で「強調しすぎない」「違和感がない」演出が実現できます。
「IoB(Internet of Behaviors)」は、人の行動や習慣データを用いて、よりパーソナライズされた体験を提供するアプローチです。
空間演出にIoB手法を取り入れた実績「Immersive Motion」
また、Environmental IoTでは、自然環境の動きや変化(風の流れ、水の流れ、気温など)をデジタルデータとしてリアルタイムに取得し、演出に活かすことができます。たとえば、David Bowen氏の「TELE-PRESENT WIND」やJiayu Liu氏の「The Riverside」などの作品は、自然の動きをデータとして嚙み砕き、その美しさをテクノロジー仕様で再現し、観る者に感じさせます。 こうしたIoB/Environmental IoTのアート的なアプローチにより、人と空間の間に新たなつながりが生まれ、デジタル演出に生命力が吹き込まれます。私は、これが単に「見えるもの」ではなく「感じるもの」へと空間体験を進化させ、デジタル演出を日常に取り込む一つの答えになると考えています。