CIC NOTE

2026/02/19

体験をふくらませる「音声ガイド」という手法
渡辺 あや
体験をふくらませる「音声ガイド」という手法

2026. 02-19

渡辺 あや

文:渡辺あや イラスト:山岸将大

UXデザイン部の渡辺と山岸です。普段はデジタルコンテンツを起点に、空間全体の体験企画や映像・アプリケーションなどコンテンツの制作ディレクションを行っています。
突然ですが、みなさんは普段ミュージアムや観光地において、「音声ガイド」「デジタルガイド」「展示ガイド」と呼ばれるようなサービスを利用したことはありますか?
スマートフォンや専用機器など多様な形式で、展示物を目で見ながら利用者に合わせた解説を聞くことができたり、ストーリーテリングのような形でより楽しく、深い理解を促したりする機能を持つサービスで、多くの施設へ導入されています。
また近年は画像認識・AI・位置情報などの技術を用いた体験機能が搭載されている例も多く、従来の「展示解説を補足する機能」とは異なる、展示物を中心とした「空間におけるテーマ訴求のための手法」として捉え、展示を構成する一つの要素として成立し、企画・制作されるケースもあります。

乃村工藝社においても、集客空間のプロデュースを担う作り手として、空間を中心とした多様なチャンネルによるテーマ訴求を「音声ガイド」や「デジタルガイド」という形で実装しています。

この記事では、日々の業務で扱う手法を定期的にゆっくり見つめ直したい!と思うこともあり、音声再生機能限らない機能も含む、課金制を伴う音声ガイドサービスについて調査を行いました。
今後も空間における集客効果を高めるひとつの切り口として、「音声ガイド」というサービスの在り方について調査し、その結果と今後の期待について触れていきます。

  

空間のプロから見た「音声ガイド」への評価

空間創造のプロである乃村工藝社の社員120人にアンケートの協力を得て、約7割の人が「課金を伴う音声ガイドを利用したことがある」と回答。
さらに、下記の質問1・質問2へ回答してもらいました。

  

アンケート調査の結果、課金制の音声ガイドサービスを利用した経験がある人のうち、約6割が「貸出型端末」のガイドシステムを利用していたことが分かりました。また、課金制であっても利用したいと考えるデジタルガイドについては、約6割が「貸出型端末」を選択しました。いずれの質問においても、「貸出端末」か「利用者が所有する端末を利用する方式」を回答の選択肢として設けていますが、両方の質問において「貸出端末」に回答が集中している点が特徴的です。

  

その音声ガイド、どんな価値がある?

調査結果をふまえ、物理的な端末を利用すること以外の要因がサービス利用を後押しする可能性にも焦点を当てたいと思います。
例えば、所有端末で利用するにはスペックの十分・不十分や、バッテリーやネットワーク接続などの何らかの不便があるところを、貸出端末では貸し出されたその瞬間から不自由なく使えるといったアクセスが最短距離になることや、「いまこの場所だけの体験」という特別感が支払いを後押ししているとも考えられます。
調査では、自由記述形式で音声ガイドについて広く意見をいただくことができました。
「簡単な操作でガイダンスを選べるし、デザインがカッコいいものがいい」
「とあるガイドが骨伝導で、快適に聞こえるのに衛生的でうるさくなくて良かった」
のような、端末の意匠・操作の快適性・視聴環境における適切な端末利用が実現できることを評価しているケースが見られる一方、
「作品コンテンツに近づくと自然に音声が流れれば」
「インタラクティブなマップ上での現在地表示・モデルコースの案内がほしい」
といった特定の技術を使用した応用的な音声ガイドの利用シーンを期待している意見もありました。

  

空間体験における「音声ガイド」として

音声ガイドが利用される環境は様々であり、そのシーンごとに適切な体験を提供することが空間体験全体に対する満足度を高められると考えられます。
調査結果では少数派であった「個人のスマートフォンなどの端末を利用する」形態においては無料を含む様々な価格帯での利用と、使い慣れた自身の端末での操作、および日常の延長として気軽にアクセスするような使い方を可能にします。さらにこの形態は、事業者にとっては物理的な貸し借りを伴わないので紛失や盗難のリスクおよび端末を管理するコストを減らせるかもしれません。
一方で、貸出端末を想定したコンテンツ制作は、端末が持つ技術的な機能制限を比較的抑えることができるため設計の自由度が高く、より空間体験と連動したコンテンツ制作を実現できることが魅力ですが、利用者にとっても、コンテンツをより楽しめる機能が増え満足度を高めることができるかもしれません。そうしたサービスは利用者にとって「特別な体験」として記憶される可能性も考えられます。
今回の調査では課金制の音声ガイドについて触れましたが、シーンに合わせて、適切な手法を採用していけると良いですね。
改めて、アンケートにご協力いただいた皆様、貴重なご意見をありがとうございました!

  

あの手この手を使いこなす

今回の調査では課金性のある音声ガイドサービスについて、展示の補足解説に限らない価値提供の可能性について触れました。重ねて、あらゆるタッチポイントを駆使することは、空間が訴えるテーマ訴求を最大化できる可能性を感じます。
私たちが取り組む空間創造とそこに存在するサービスや機能とは、定めたターゲットはもちろん、あらゆる人にとって、やさしく、満ち足りた空間体験となるように、物理空間をも超え、立ち止まらずに試行錯誤するのみ!と考える機会になったのでした。
ちなみに、このアンケート調査の発端は音声ガイドサービスについて調べる中で、「空間のことは空間のプロに聞こう!」と考えたところから始まりました。あの手この手で試行錯誤の旅は続く。興味がある方、ぜひお話ししましょう!

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