CIC NOTE

2025/11/04

夜の自然×エンターテインメント
鈴木 さやか
夜の自然×エンターテインメント

2025. 11-04

鈴木 さやか

皆さんこんにちは!CICの鈴木さやかです。
テーマパークに住みたいくらいテーマパークが好きな空間デザイナーです。
企画や体験設計、空間演出といった領域を中心に、人の心を動かす場づくりに携わっています。
今回は、ナイトウォークの設計経験をもとに、「夜の自然とエンターテインメント」が生み出す新しい価値についてお話します。
 

夜の自然が秘める体験価値

夜の自然は、光が少なく視覚情報が限られる分、華やかな光や音の演出が際立ちます。
昼の開放的な風景とは異なり、闇が景色を隠すので、想像力が空間を補い、体験そのものが深まっていくのです。
「自然=昼の観光」というイメージは変わり始め、海外ではナイトアクティビティが観光経済に大きく貢献しています。
夜の自然を活用したコンテンツは、非日常の体験価値を提供し、滞在時間の拡大や消費を促進できる可能性を秘めています。

  

光と音で夜を彩る

イルミネーションや花火、ドローン演出、プロジェクションマッピング、ナイトウォーク。夜間のエンタメ事例は増えつつあります。ナイトサファリやナイトミュージアム、アートナイトにナイトシネマ、ナイトプールまで。
いつもの場所に「夜」が加わるだけで、非日常に変化して、ちょっとワクワクしませんか?

イギリスのエディンバラでホグマニーという年越しのお祭りに参加したことがあります。
松明を手にして歩くというシンプルな体験ですが、大晦日のお祭りムードのなか、大勢の人たちと一緒に、炎が灯された松明を持って街中を練り歩く、あの光景や高揚感は今でも心に刻まれています。

  

夜の森のナイトウォーク

さて、ナイトウォークで重要なのは“既存の自然を活かす”設計だと考えます。
山の地形や木々の形、水面の反射、風で揺れる影など、自然が持つ要素そのものを演出に組み込むことで、その場所固有のコンテンツとなります。何かを加えて空間全体を体験するので、インスタレーションにも近いと思います。

照明や映像、音響を組み合わせ、一貫したストーリーを設けることで、より高い体験価値を創出できます。
さらにミストやスモーク、バブル、香りなどの特殊効果を組み合わせれば、五感を刺激する没入体験に。
来場者が参加できるインタラクティブな仕掛けも、ストーリーを盛り上げるポイントです。

また、CICの得意領域であるキャラクターIPとのコラボレーションによって、集客やファンづくりの広がりも期待できます。
このように夜の自然は、演出次第で大きく魅力を伸ばすことができるのです。

  

持続的に楽しむための夜の空間づくり

夜の自然を楽しむためには、安心と安全が欠かせません。暗闇に身を置く体験だからこそ、細やかな設計が求められます。
足元をやさしく導く照明や安全な動線、動植物や環境への配慮を前提とした演出、日中の景観を損なわない機器配置など、持続的に開催できる仕組みをつくることが、地域資源を守りながら魅力あるコンテンツをつくる鍵となります。
  

おわりに

夜の自然のエンターテインメントは、地域資源を活かしながら、観光や経済の価値を高める取り組みです。
昼とは異なる表情を引き出し、驚きや発見、物語をつくること。「見る」観光から、自然を「体感する」観光へ。
夜の自然の活用は大きな可能性を持っています。これからも、暗闇の中にひそむ光や物語を探しながら、地域の未来につながるエンタメ空間づくりに挑戦していきます。