CIC NOTE

2025/06/17

ワンダフルな立体物
瀬沼 隆遠
ワンダフルな立体物

2025. 06-17

瀬沼 隆遠

はじめまして、CICの瀬沼です。工学部卒のせいもあって社内では機械系を担当することが多いですが、その興味の根源にはプラモデルがありました。小学生になる以前からプラモデルを触り、いまだにそれをやめられず、しかし確かに現実に存在する立体物への「ワンダー」とはなんなのかを考えます。


「見る」ということ
人間には2つの目がある。この2つの目は、肉食動物の様に対象物との距離を測ることができるよう、顔の正面方向を向くように進化した。2つの目それぞれで物体を見ることによって2方向から物体を認識し、脳がそれを立体として処理する。視界を立体空間として適切に処理することで対象物との距離を認識しやすくなる。そしてこの3次元物理空間は一般的に現実の中にしか存在しない。

「立体」に見えるということ
目の前に存在する対象物が立体である事を認識するためには、2方向から見る必要がある。1方向だけでは錯視的なイラストか本当に立体なのかを区別することができないためだ。立体であるかとうかを確認するためには対象物を手に持って方向を変えるか、立体を中心に自分の位置を変えるしかない。こうして1方向では見えなかった方向から見た時に初めて知覚できる情報が、立体が立体だからこそ我々が得られるワンダーである。

「ワンダー」なこと
河原で小石を手に取った時、誰しもその石を回してどんな形をしているか知ろうとするだろう。裏側に穴が空いているかもしれないし、化石が見つかるかもしれない。より大きな立体であれば、遠くで見るよりも近くで見る方が大きさを正しく認識できることもあるだろう。写真の造形物では、髪はその体積以上の空間を表現していることがわかる。図1を見ただけでは、左右に伸びる髪のボリュームしか認識できない。図2図3を見ることではじめて前に伸びるもみあげの形状や、後ろ髪がどんな方向にボリュームが取られているかわかる。図4で見られる髪の形状はもはや飛雲にさえ見える。つい手に取って実物を見たくなるのでこうして複数の方向から撮影した写真を載せるが、写真になった時点で立体としての魅力のほとんどが失われるのが惜しまれる。自分の目で直接見ることで初めて知覚できる事そのものがワンダーであり、それが立体物として得られる3次元物理空間の魅力となる。

図1 正面

図2 正面左

図3 正面右

図4 背面

そんな立体物があったら良いなと考えながら、今日も模型売場を散策している。