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CIC NOTE
近ごろ、ショッピングモールやアミューズメント施設、さらには美術展など、ありとあらゆる場所で「イマーシブ(没入型)」という言葉が使われています。でも、この言葉、いろいろなところで使われすぎていて、正直なところ「何がイマーシブなの?」と疑問に感じる人も多いかもしれません。
もともと「イマーシブ」は、「まるでその中に入りこんでしまったような感覚」を指します。しかし今では、映像がぐるりと取り囲む部屋から、パフォーマンスの中に入り込む体験、さらにはVRヘッドセットによる個人向け体験など、手法もレベルもバラバラで、「イマーシブ」という看板があちこちで立てられています。この結果、「イマーシブ」の意味が広がりすぎて、逆に中身がわかりにくくなっている状況になっています。 かう言う私も”イマーシブガーデン”と名の付いたインスタレーション作品の制作に参加していました。この作品は48chのいわゆるイマーシブオーディオで音響設計されており、音のイマーシブについて真剣に向き合うきっかけとなったプロジェクトでした。
今まで「イマーシブ」といえば、まず頭に浮かぶのは映像だったかもしれません。事実、映像や造作の部分にフォーカスされた企画がほとんどだと思います。
でも実は、音のイマーシブでも大きな進歩が起きています。皆さんが日常で体験するリッチな立体音響体験としては、映画館の7.1.4chを代表例とするDolby Atmos規格があると思います。ch(チャンネル)は音のリソースの数やスピーカーの数を表現しています。しかし技術的には64chや128chといった、もっと多チャンネルの超立体音響表現が実現可能になっています。十数ものスピーカーが空間に配置されて、1つの音源ソースをオブジェクトとして上下左右、さまざまな方向から細かく移動し、まるでその場に実際の物体や生き物が存在するかのような感覚を作り出せるのです。
VRヘッドセットを使えば、一人きりで没入体験ができますし、視界も聴覚もコントロールしやすく、個人ごとの完璧なバーチャル空間を作るのは実はそんなに難しくありません。また、現実空間のようにプロジェクターやスピーカーをたくさん用意する必要もありません。しかし、リアル空間でそこにいるたくさんの人たちと同時に没入するとなると、一気に難度が上がります。
リアルな空間では、人それぞれ立ち位置が違いますし、みんなが同じように「そこにいる」感覚を得るには、映像・音響・造作に加え、体験人数や動線まで考え抜くことが求められます。
リアル空間でのイマーシブ体験は、「その場にいる他者との共有感」が大きなポイントです。一緒に体験した人との間に、言葉にならない一体感が生まれます。それはVRゴーグルをかぶって一人で味わう体験とはまるで違う、ライブ感のある「没入」なのです。
今後、映像技術に加えて音響技術もさらに進化し、音を活かした新しいイマーシブ空間が次々と生まれていくでしょう。マルチチャンネルを活かした超立体音響はゲストにとって新たな没入体験になるに違いありません。
空間デザイン会社のテクニカルディレクターとして、空間を通じて感動を共有できる“これからのイマーシブ”に多種多様なスキルを持った仲間と挑戦したいです。